コスト最適化のカギはボリュームスタディと概算CLT使用量!

CLTを活用した建築物の費用対効果を検討していく中で、プロジェクトの初期段階でのボリュームスタディが非常に重要となります。この段階でCLTの実物件や利用例を参考にすることが、より具体的で実現可能な計画を立てるために役立ちます。

CLT建築物におけるボリュームスタディの重要性

ボリュームスタディの段階では、土地の条件や法的規制を踏まえた上で、建物の形状や規模感を決定します。過去のCLT建築事例をもとにボリュームスタディを行うことで、得られる環境メリットやデザイン性を最大限に活用することができます 。

1. 実物件・利用例を参考にしたイメージ作成

見学が可能な建物は少ないですが、実際に気になる物件に足を運んでいただいて、環境との調和や周囲の建物との関係性(道路状況等も含めて)を実感していただくことが大事だと考えています。外観の見学だけでも現地での印象を含めて、施主や設計者がより具体的に「CLTで建てる」とはどういうことかを理解しやすくなります。

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⇒ おすすめ資料『実物件から学ぶCLT建築講習会シリーズ動画』(①~⑤)

2. イメージの反映による設計の具体化

実物件の見学会や説明動画等があれば、住空間や共用スペースの配置、耐久性の考慮、採光や通風の最適化などについて参考にし、クライアントの要望に合った形状や機能を具体化することが可能になります。

CLT建築のコスト管理と過去事例の調査

ボリュームスタディによっておおよその規模感がイメージできたら、次はCLTの使用量を検討します。全面的にCLTを使いたい、あるいは部分的にCLTを採用したい、という施主のイメージに沿った構造形式を検討し、CLTの使用量を算出します。CLT用の簡易な壁量計算ソフトが資料一覧にありますので参照してください。

⇒ おすすめ資料『ルート1用 壁量検討シート

CLTを採用するときのコストとして、CLT使用量、接合金物、運搬費、施工費等多くの要素を合算した金額を検討する必要があります。過去の事例や実績に基づいて推定することができますが、近年の外的要因によってコストの変動が激しくなっています。特に、材料費や労賃の変動は予測が難しいため、柔軟な計画が求められます。

1. 過去の事例調査

実際に建てられたCLT建築物のコストについての資料は限られてはいますが、日本住宅木材技術センター等に資料としてまとめられています。ボリュームスタディとコスト感が合致しない場合には、補助金の検討をするのもよい手段です。

⇒ おすすめ資料『CLT 実証事業の事例に関するコスト分析報告

2. 建築業界の技能者・技術者不足への対応

日本の建築業界における技能者や技術者の高齢化と、若年層の急激な減少が、将来的なコスト高騰に繋がる可能性があります。2024年現在、日本全体で20歳以下の大工は2000人しかいません。熟練の職人や技術者の不足が、将来的な人件費の高騰だけでなく、現在の施工の品質や効率性、施工スケジュールに甚大な影響を与えることが考えられます。コスト検討の際には、余裕をもったスケジュールの組み立ても必要になります。

まとめ

ボリュームスタディを通じてCLTの利用量を決定することは、環境負荷の低減を最大化するための第一歩です。また、補助金や認証制度などを活用するための戦略を立てることも重要です。その際に、実物件や利用例を参考にしたイメージ作成が、より具体的で実現可能な計画につながります。同時に、過去の事例を基にしたコスト管理や、近年の外的要因による価格変動を考慮に入れることが求められます。また、建築業界の技能者・技術者不足により将来的な価格高騰が懸念される中で、余裕を持った計画が重要です。事業性の検討を慎重に行い、柔軟で安定したプロジェクト運営を目指しましょう。