CLTは軽量で高強度な素材であり、環境負荷の低減に大きな貢献ができるため、特に欧米では積極的に使用されるようになっています。日本においても、CLTをはじめとする木材を利用した建築物が増えており、その将来性を考える上で重要な要素として、Life Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント:製品やサービスのライフサイクル全体における環境負荷を評価する手法。以下LCA)の導入が求められています。
1.LCAの重要性とエンボディドカーボンの算出
LCAとは、建築物や建材のライフサイクル全体における環境負荷を定量的に評価する手法です。特に、エンボディドカーボン(建材の製造過程で発生する二酸化炭素排出量)の算出が重要な要素となっています。欧米では、すでにエンボディドカーボンの算出が義務化されつつあり、これが建物の評価において一つの基準となっています。
日本でも、LCAの評価を取り入れる動きが進んでおり、国交省がリリースしたJ-CAT(建築物ホールライフカーボン算定ツール)はその一環と言えます。従来、建物の価値は主に減価償却で評価されていましたが、今後は環境性能もその一部となることが予想されます。
2.CLTの特性と事業性への影響
CLTは、強度が高く、比重が軽いため、特に基礎工事の軽減が可能です。これにより、コストの削減が期待できるとともに、施工効率が向上します。また、CLTはその特性から、環境に優しい建材としても評価され、LCAを通じてそのエンボディドカーボンを算出することで、環境性能を可視化することができます。
木材を利用した建築物は、LCAの観点からも非常に魅力的であり、今後はその導入を積極的に検討することが事業性の評価においても重要となります。CLTの断熱効果等運用時の効果を併せた建物の環境性能を証明することで、持続可能なビジネス展開につなげることが期待されます。
3.環境評価ツール(CASBEE)と不動産業界の動向
建物の環境性能評価は不動産業界においてますます重要な要素となっています。特に、日本においてはCASBEE(Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency)や、LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)など、環境評価ツールが広く活用されています。これらのツールを使用することで、建物の環境性能を定量的に評価し、エネルギー効率や持続可能性が高い物件として市場価値を高めることができます。
CASBEEなどの環境評価を受けることで、事業者は不動産市場において有利に立つことができ、購入者やテナントにも環境配慮型の物件として魅力的に映るでしょう。これにより、特に環境意識の高い企業や消費者層からの支持を得やすくなります。したがって、CLTを使用することによる環境性能向上は、単にコスト面での利点だけでなく、環境評価をクリアすることで不動産価値の向上にもつながります。
4.木造建築物の耐用年数と金融機関の評価
さらに、国交省から木造建築物の耐用年数に関するガイドラインが発表され、木造建築の評価基準に変化が現れつつあります。これにより、金融機関による木造建築物の評価が今後変わる可能性があります。これまで、木造建築物は鉄筋コンクリート造や鉄骨造に比べて、耐用年数が短いとされることが一般的でしたが、新しいガイドラインのもとでは、その価値の見直しが進むことが期待されています。
特に住宅の性能表示基準を併せて施主に説明できるようにすると、木造建築の新たな評価軸を理解してもらいやすくなります。このような情報を事業者側から提供することが、信頼を築く一助となるでしょう。
5.メンテナンス費用とLCAの観点
CLTを使った建築物において、メンテナンス費用の検討が欠かせません。しばしば、建築物のメンテナンスコストが事業予算等に含まれていないケースがありますが、これには注意が必要です。メンテナンス費用もLCAの一部として評価することが重要であり、施主に対してこの点を説明することが求められます。CLTは、適切なメンテナンスを行うことで、長寿命を実現できる素材ですが、そのためには事前にメンテナンス計画を立て、費用を見積もることが必要です。
まとめ
CLTを活用した建築物の計画において、LCAによる環境負荷の評価は欠かせない要素です。今後、環境性能が建物評価の基準として加わることを踏まえ、CLTをはじめとした木材を積極的に活用することで、持続可能な建築の実現に近づくことができます。また、CASBEEなどの環境評価ツールの活用により、不動産市場においての競争力を高めることができ、事業者としてのメリットも大きくなります。耐用年数やメンテナンス費用を含めた事業性の検討を行い、施主や金融機関に対して適切な情報提供を行うことが、今後の建築業界での競争力を高める鍵となるでしょう。
CLTを取り入れた建築物の可能性を最大限に引き出すために、これらのポイントを考慮しながら、計画を進めていくことが重要です。